「道具は職人の命」
小紋の染型に用いる伊勢型紙。その彫り技の一つ〝道具彫り〟の第一人者である重要無形文化財保持者、中村勇二郎。
勇二郎は代々、型紙彫刻の道具彫を営む家系に生まれ幼少の時より父の兼松を手伝っていたそうです。学卒後16歳頃から父のもとで本格的な修業を始める。その指導法は厳しく、すべて「自分で考えろ」と突き放す昔ながらの徒弟修業でした。
戦時中でも日々鍛錬を重ね、昭和30年に重要無形文化財「伊勢型紙 道具彫」の保持者として認定されました。
道具彫では、型を彫る技術はもちろんのこと、柄や文様を彫る道具を多数揃えておく事が肝心で、磨きに5年、道具作りに10年と言われる。
「道具は職人の命」と語り、自ら制作した道具をはじめ江戸時代から伝わるものを大切に扱い、三千本にも及ぶ道具を揃えて手入れを怠らなかった。
「人よりも良いものを作りたい」と、人間の手仕事と機械作業との違いにあくまでこだわり続けました。
高度な彫刻技術は昭和天皇、皇后両陛下に型紙を献上するという最高の栄誉に浴し、称賛の御言葉を拝しています。
芸術性の高い手付による伊勢型紙の江戸小紋の本物の味わい、その手技の極みをぜひご覧頂きたいと思います。