〝染め一生〟
きものを愛好する人たちの間で、絶対的な人気を持つその作品は「青々調」と呼ばれ染織文化の香りを現代に生かした傑作として永遠の人気を保ち続けている。
次々と秀でた作品を発表した青々は、名匠としてその名を知られた京友禅の第一人者です。
凝ったきもの、手の掛かったきものとして、青々の作品には、絞り染めの手法、繍の手法など京都千年の歴史の中で培われてきた優れた染繍の技法が散りばめられています。
京都の染織は貴族をはじめとする上流階級のオシャレを着道楽を支えてきた。洗練されたセンスと質の高い技術が、つねに要求されてきたために、分業という型で技術を高度化させ、その分担する部門をさらに細分化させることによって技術に磨きをかけて、「ひとりでなんでもこなせる」段階を越えてゆき、さらに高度化していきました。
さまざまな質の高い技法が絹の上で昇華されて、一枚の美しいきものが出来上がる。家業として二代、三代と受け継いできたプロの集団がいてくれるからこそ、〝作る人も売る人も、着る人も得心出来るような価値のあるきものづくりが可能なんです。〟と過去のインタビューで語っています。
細分化された技術者に仕事を依頼するので、それらの人達の技術、ランクによってきものの値打ちが決まってきます。昔から女性の憧れであった京都の高級呉服は染織の総合芸術的経過をたどり出来上がってきました。
意匠にを指示して、絞りはどこそこ、繍いは何々さんへと、それぞれ専門家に仕事を依頼する。その全てをプロデュースした松井青々は、まさに染め一生の世界を生きた名匠です。