水が流れ、風がそよぐ。
自然は繊細に時には力強く生成し変化し続ける。
伊豆蔵明彦氏は自分の作品を絶えまない自然の現象を表すものとして考えているといいます。
伊豆蔵氏は大学一年生の夏、家業である織屋の生産部門を一人で任される。織物と本格的に取り組むうち、しだいに西陣の織物に疑問をいだくようになる。
周りが夢中になっている伝統的な織物の多くは全く同じものに見えて仕方がない。その中で一つの問いに直面する。
「人はなぜ布をつくる一本の糸に惹かれるのか?」
人が糸をつくる理由を求めて歴史の流れを遡り、織物と編物をへて組物と出会う。
組物の中でも膨大な製作時間を必要とする複雑な技法から、組物の至宝といえるものが「唐組」です。
この「唐組」は飛鳥から平安時代にかけて頂点を迎えましたが、制作の複雑さからか、やがて忘れ去られていったもの。
伊豆蔵氏は20年もの歳月をかけて唐組を研究し、新しい「和唐組」を制作しました。
伝統に反発するのではなく、伝統を追求する中で答えを見つけた伊豆蔵明彦氏。
その答えを形にしたものがこれらの組帯です。
人の歴史から、さまざまな思いを学び、形にする。そういうものを感じながら身につけることにも意味があるのかもしれませんね。